アパートにも使われている? 〜アスベストとは?~
TVニュースや新聞、インターネットなどでも取り上げられるアスベストですが、「体に悪いイメージがある・・・」、「聞いたことはあるけれど詳しくはわからない・・・」という方も多いのではないでしょうか。
今回は、主に建材製品として生活のいたるところで使用されてきたアスベストの解説と建築済みの建物における調査義務をお伝えしたいと思います。
1:アスベストとは?
アスベストは、石綿(せきめん・いしわた)とも呼ばれる、極めて細い繊維状の天然の鉱物(髪の毛の約1/5000の太さ)です。
安価な上に、耐火性・断熱性・防音性・絶縁性など様々な点で優れていることから、耐火・断熱・防音等の目的で建築材・電気製品・自動車・家庭用品などに幅広く使用されてきました。
また、熱や摩擦、アルカリや酸にも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っていることからも「奇跡の鉱物」として重宝されてきました。
建物では、学校・駅・病院・遊技場など人の多く集まる建物で、火災に備えた「軽量耐火被覆材」として1955年頃から使用され始め、1970~80年代にかけて使用のピークを迎えますが、以降は減少に転じ、現在では原則使用が禁じられています。
1.1:アスベストによる健康被害とは
アスベスト繊維は細くて軽いため空気中に浮遊しやすく、吸入されて人の肺に入ってしまうと15~40年程の長い潜伏期間を経て、肺がんや悪性中皮種などの病気を引き起こすおそれのあることが以前より認識されてきました。
しかし、その認識はあっても、建設業や石綿製品工場の労働者だけが罹患する職業病と考えられていましたが、実は関係する労働者以外にも著しい健康被害を及ぼすことが後に発覚することになりました。
その代表的ともいえる事件が2005年に報じられた、クボタのアスベスト事件です。
これによって、クボタのアスベスト工場の周辺住民にもアスベストによる疾患発症が起きていたことが報道されました。
この事件の報道をきっかけに、労働者だけでなく、周辺住民にまで甚大な健康被害をもたらすことが判明したアスベストを使用した石綿(アスベスト)および石綿製品は、2006年9月1日から製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されました。
しかし新たなアスベストの使用が禁止になっても、これまで製品や建物に使用されてきたアスベストが現在も私たちの身の回りには数多く存在します。特に住宅やビル・工場・倉庫などの天井や壁などに使用されているボード類は破損や劣化などがない限り、(学校など一部の公共施設を除き)改修工事や解体が行われるまでは緊急性を伴う危険性はないとして、そのままアスベストが使われているのが現状となっています。
一般的にはアスベストが使用されている場合でも、建物を解体する際には飛散する可能性が高くなると考えられているものの、飛散しないような措置が取られていたり、飛散するおそれのない建材であれば人が吸引するリスクは低いと考えられています。
問題は、「アスベストが使用されていること」ではなく、「アスベストが飛散して空気中に浮遊しているために人が吸引してしまう」という点です。
2:契約時にはアスベスト調査についての説明義務がある
家やマンションなどを貸借・売買する際の不動産の取引条件などは内容も難しいため、専門的知識を有する宅地建物取引士が、契約を締結する前に借主や買主に物件の詳細をわかりやすく説明することを「重要事項説明」といいます。
「重要事項説明書」とは、借主や買主を守るための書面であり、借主や買主が誤った判断で契約することを防止する役割があります。
この中に「石綿使用調査結果記録の有無」についての記載もあり、石綿(アスベスト)の使用の有無の調査結果が記録されているときは、その内容を取引先相手に書面で説明しなければなりません。
国土交通省はアスベストには健康被害があるとの通達を出していますが、賃貸物件のオーナーは「所有する物件にアスベストが使用されているかを必ずチェックしなければならない」というわけではありません。
賃貸物件の契約上、石綿(アスベスト)の使用の調査が行われたかといった内容を告知する義務はありますが、調査の実施やアスベストの除去対応などの義務は負っていないのです。
また、調査の実施後であれば、
・調査の実施機関(調査会社等)
・調査の年月日
・調査の範囲
・石綿の使用の有無及びその使用箇所
について説明します。
石綿(アスベスト)使用の有無がわからない場合でも、吹き付けられたアスベスト等を発見したり、劣化等により粉塵が飛散していたり、その粉塵にばく露する恐れがあるときには、除去・囲い込み・封じ込め等の措置を講じなければならない(石綿障害予防規則)とされています。
3:使用状況を事前に調べられるのか?
アスベスト使用の可能性を事前に知りたい。もしくは調べたいという場合は、建物の築年数でおおよそを推測・把握することもできます。
国土交通省の資料によると、日本におけるアスベストの使用のピークは1970〜1990年代であるとされています。
あくまで目安とはなりますが、この期間に建築・リフォームされた物件にはアスベストが含まれている可能性があると言われています。
■参考
国土交通省 「アスベスト対策Q&A」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/Q&A/index.html#a26
4:まとめ
以上、「アパートにも使われている? 〜アスベストとは?~」をお伝えしました。
アスベスト調査実施の有無に限らず、アスベストが使われているからといって、必ずしも差し迫った危険があるというわけではありません。
築年数が古い建物においては、建築物の所有者または管理者は早い段階で建築物のアスベスト含有建材の有無や状態の把握をした上で優先順位を決め、中期的な改修・リノベーションの中で、国土交通省が計画的にアスベスト含有建材の除去をしていくことを勧めている動きもあります。
基礎疾患をお持ちの方や、小さなお子さまがいらっしゃる方は「自分が住んでいるor住む予定のアパートは大丈夫なの?アスベストが使われているの?」と特に気になるのではないでしょうか。
安心した毎日を送れるよう、本日の内容をお部屋探しの参考にしていただければと思います。